No.408 ナースの本音に耳を傾けて

白衣の天使と呼ばれ、患者のそばで献身的に働く看護師たち。しかしその笑顔の奥には、誰にも見せていない「本音」があります。今回は、現場で働くナースたちが抱えるリアルな気持ちにスポットを当て、「なぜ悩み、なぜ続けるのか」を丁寧に掘り下げていきます。
「患者さんには優しくできるのに、自分には優しくできない」

ナースの多くは、人の痛みや気持ちに寄り添う力を持っています。夜勤明けでヘトヘトでも、患者に「ありがとう」と言われれば笑顔を返し、つらそうな家族には言葉を選んで寄り添う。でもふと気づくと、自分の体や心の悲鳴には鈍感になっていることも。
「もう限界かも」と思っても、「これくらい大丈夫」と無理をしてしまう。そうやって心身をすり減らし、気づけば燃え尽きかけていたという経験を持つナースは少なくありません。本当はもっと、自分をいたわる時間も必要だと分かっているのに、それがなかなか許されない現場の空気。人をケアする仕事だからこそ、自分のケアが後回しになってしまう。そのジレンマを、ナースたちは日々抱えています。
「命と向き合う仕事だから、簡単に“慣れた”なんて言えない」

新人の頃は、初めての採血、初めての急変、初めての死に立ち会う経験に、涙が止まらなかったというナースも多いでしょう。それが数年経つと、「慣れてきた?」と聞かれることがあります。でも、心の中では「慣れるものじゃない」と感じている人がほとんどです。
患者の死は、いくら経験を重ねても重たい。どんなに穏やかな最期でも、「あのときもっとできたことがあったのでは」と自問する瞬間があります。心のどこかに常に緊張と責任があり、「失敗できない」というプレッシャーとともに働いているのがナースの本音です。
そしてそれは、常に命の現場にいるからこそ。「慣れ」ではなく、「受け止める力」を少しずつ身につけていくことが、看護の現場で生きていく方法なのかもしれません。
「チームで働くって、こんなに難しいんだと知った」
ナースの仕事は、単独では成り立ちません。医師、看護師、薬剤師、リハビリスタッフ、事務、患者の家族……多職種が関わる中で、意見の違い、情報の食い違い、上下関係に悩むこともあります。特に看護師同士の人間関係にストレスを感じる人は多く、休憩室での会話や申し送り時の空気が重荷になることも。
「看護そのものより、人間関係のほうがつらい」と感じて転職する人も少なくありません。人のケアをする前に、自分が安心できる職場づくりができているか。看護の現場では、業務の能力以上に「人とどう関わるか」が問われるのが現実です。
それでも、信頼できる先輩がいて、話を聞いてくれる仲間がいるだけで、乗り越えられる日もある。だからこそ、職場の人間関係はナースにとって切実な問題なのです。