No.414 現場で信頼されるナースになるための質問力と対応の基本
医療の現場で働くナースには、患者やその家族、医師や多職種スタッフから日々さまざまな「質問」が寄せられます。適切な受け答えができるかどうかは、信頼関係を築くうえで非常に重要です。わからないことをそのままにしない「質問する力」と、相手の不安を汲み取る「質問に答える力」の両方が求められます。本記事では、ナースが日常業務で直面する質問の種類と、それにどう対応すべきかを具体的に解説します。
患者からの質問には“わかりやすさ”と“安心感”を
患者さんからの質問は、症状や処置に関するものだけでなく、不安や戸惑いからくるものも多く含まれます。「この薬、何のために飲むの?」「検査は痛いの?」「いつごろ退院できますか?」など、医師に聞きにくいことをナースに尋ねる場面も多いのが現実です。
こうした質問に対応する際には、専門用語を避け、できるだけ簡潔でわかりやすい言葉で説明することが基本です。たとえば、「抗生剤です」とだけ答えるのではなく、「体の中の菌をおさえて、熱が上がらないようにする薬です」と補足することで、患者さんの不安は大きく軽減されます。
また、わからないことを聞かれた際には無理に答えようとせず、「確認してからお伝えしますね」と誠実な姿勢を見せることが信頼につながります。間違った情報を伝えることのリスクは大きいため、“確認する勇気”を持つこともナースとして重要な対応力のひとつです。
家族からの質問には「共感」と「丁寧な説明」を意識する
入院中や処置の場面では、患者本人以上に家族が不安を抱えていることもあります。「今の状態はどうなんでしょうか?」「この先どうなってしまうんですか?」といった質問には、医師の説明を補うような形で対応する場面も多くなります。
ナースは診断を下す立場ではありませんが、毎日の観察から得られた情報をもとに、事実と安心感をもって答えることが求められます。たとえば、「今朝はご飯を半分ほど召し上がっていました」「痛みはあるようですが、会話もはっきりされています」など、具体的な様子を伝えるだけでも、家族の気持ちは大きく落ち着きます。
また、話を聞く姿勢も大切です。早口で説明するのではなく、相手の不安や気持ちを受け止める時間を持つことが、関係性の構築において大きな意味を持ちます。
医師や多職種スタッフへの質問は“タイミング”と“簡潔さ”が命
ナース自身が医師や他職種に質問をする場面では、内容の正確さとタイミングが大きなポイントになります。医師は業務の合間に動いているため、「報告・連絡・相談(報・連・相)」の区別をつけて、簡潔に要点を伝えることが重要です。
たとえば、「○○さんの点滴が残り少ないですが、同じ内容で継続してよろしいでしょうか」といった質問の仕方は、医師が即座に判断しやすくなります。「どうしたらいいですか?」と漠然と聞くのではなく、自分なりの見解を添えて質問する姿勢が、信頼を築く近道です。
また、チーム全体の動きを意識し、「今このタイミングで聞いていいのか」を見極める観察力も必要です。手術後や診察直後など、相手の余裕がない場面では、一度メモを取り、後ほど質問するなどの配慮も信頼関係を保つために重要な立ち回りとなります。
新人ナースの“質問する力”が成長のカギになる
新人ナースにとって、先輩や上司に質問することは緊張を伴う行為かもしれません。しかし、「わからないまま進める」ことの方が、現場にとっては大きなリスクです。「こんなこと聞いても大丈夫かな」とためらう前に、「今の自分に必要な知識だ」と前向きに捉えることが成長への第一歩です。
質問する際には、ただ「教えてください」ではなく、「ここまでは自分で調べたのですが、ここが曖昧です」と伝えると、相手にも真剣さが伝わり、より丁寧に教えてもらえることが多くなります。また、教えてもらった内容は必ずメモを取り、自分の言葉で再確認する習慣を持つことで、知識として定着しやすくなります。


